はじめに

「エンジニアはMac、それ以外はWindowsなんですが、管理はどうするのが正解ですか」。デバイス管理に関するご相談の中では、この混在環境の質問が多いです。

選択肢は事実上2つに絞られます。Intune に両OSとも載せて一本化するか、Windows は Intune、Mac は Jamf Pro という併用構成にするか。どちらも実績のある構成で、唯一の正解はありません。ただ、自社がどちら寄りかを判断する軸ははっきりしています。

前提の整理 — IntuneはMacも管理できます

まず前提として、Intune は Mac の管理に対応しており、基本的な統制はIntuneだけで実現できます。

  • Intune でできること(Mac): デバイス登録、設定プロファイル配布、FileVault(ディスク暗号化)の強制、パスコードポリシー、アプリ配布、準拠状態の判定と条件付きアクセス連携
  • Jamf Pro が優位なこと: Smart Group(動的グループ)によるグルーピング、複雑なスクリプト運用、アプリのパッチ管理、macOS新バージョンへの追従の速さ、Apple製品前提の管理画面設計など

つまり「MacにはJamfが必須」ではなく、Macをどこまで深く管理したいかが分かれ目になります。

判断の3つの軸

  • 軸1: 管理の深さ
    • 「暗号化・画面ロック・資産把握・標準アプリ配布ができれば十分」なら Intune 一本化で足ります
    • 「端末の状態に合わせて動的にグルーピングして、そのグループ単位に対して制御をしたい」なら Jamf の出番です
  • 軸2: 運用体制
    • MDMは入れて終わりではなく、ポリシーの手入れが続きます。管理ツールが2つになると、学習・運用の負荷も2倍に近づきます
    • ひとり情シスや兼任体制なら、管理画面がひとつである価値は想像以上に大きいです
  • 軸3: コスト
    • たとえばすでに EMS E3 相当(Entra ID P1 / Intune) を全ユーザーが利用している場合、Mac分の追加費用なしで始められます
    • Jamf Pro は端末あたりの追加ライセンスが発生します。Mac台数が多いほど、この差は効いてきます
    • Intuneはユーザーライセンスのため、一人複数デバイスを利用している場合は価格差が大きくなります

規模とMac比率で見る現実的な落としどころ

ご支援の経験では、次のような整理に落ち着くことが多いです。

  • Macが少数(全体の2〜3割以下): Intune 一本化を推奨します。少数のMacのためにツールを増やすと、運用が続きません
  • Macが過半でエンジニア中心: Jamf Pro 併用の検討価値があります。開発環境の細かい要求(OSバージョン固定、ツールチェーン配布など)は Jamf Pro の方が素直に組めます
  • Mac がほぼ全て: Jamf Pro 単独構成が自然です。この場合は Windows 数台を Intune で軽く管理する逆パターンになります

迷ったら「まず Intune 一本で始めて、Mac管理の要求が Intune の限界を超えたら Jamf Proを足す」という段階案が安全です。

併用する場合の設計ポイント

Jamf Pro 併用を選ぶ場合も、バラバラの2システムにしない工夫が必要です。

  • IDは Entra ID に統一する: Jamf 側も Entra ID と連携させ、サインインとグループ管理を一元化します
  • 準拠情報を Intune に集約する: Jamf の「パートナーコンプライアンス連携」で Mac の準拠状態を Intune に渡すと、条件付きアクセスの判定を両OS共通のルールで運用できます
  • 台帳はひとつにする: 管理ツールが分かれても、資産台帳・貸与記録は1つの台帳に寄せます。ツールごとの画面を見に行く運用は必ず抜けが出ます

それ以外のMDM

Intune や Jamf Pro以外にも Windows / Macに対応したMDMがあります。組織の状況によってはこの辺りも選択肢になるのではないでしょうか。

  • Jamf Now : Jamf Proの簡易版です。高度なことはできませんが基本的な管理のみだったらこちらでも可能です。(安価です)
  • Apple Business : 旧Apple Business ManagerがアップデートでApple Businessになり、Appleデバイス向けの無料のMDM機能が付属するようになりました。無料ですが初期設定は少しコツが必要なため初心者向きでは無いです。
  • iru (旧Kandji) : Jamf ProやIntuneより設定が簡単で、AppleデバイスとWindows両方管理できるのが特徴です。Oktaなど、Entra ID以外をID基盤として利用している企業におすすめです。
  • JumpCloud : こちらもAppleデバイスとWindowsを管理でき、ID基盤としても機能も含まれています(プランによる)。オールインワンで管理したい場合はおすすめです。

その他にも、SKYSEA Client View や Lanscope Cat など、監視機能に重きを置いたデバイス統制ツールもありますが、上記のMDMとは少し特色が異なる製品のため、どれかひとつを入れるというよりは併用するようなイメージで考えていただくとよいと思います。

おわりに

混在環境のMDM選定は、「Macをどこまで深く管理したいか」「運用体制がツール2つに耐えられるか」「Mac台数分の追加コストに見合うか」という判断に集約されます。中小規模であれば、Intune 一本化から始める段階案が失敗しにくい選択です。

キッティングの自動化とあわせて設計すると効果が大きいので、キッティング自動化の記事も参考にしてください。自社の構成でどちらが向くか個別に相談したい方は、デバイス管理導入支援のページをご覧ください。

参考リンク